雑記屋さん

某広告代理店勤務のクリエイティブディレクターが、時々お仕事のことや趣味の仮面ライダー/カメラのことについてツラツラと記事にしていきます!

ファンサービスの暴力!?『仮面ライダー 平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイド with レジェンドライダー』に魅了されて

『平成ジェネレーションズForever』が冬映画として興行収入の最速記録を記録したことは記憶に新しい。

しかし、あの衝撃作の前作にあたる『平成ジェネレーションズ FINAL』も忘れてはならない。というより、

この『平成ジェネレーションズFINAL』があったからこその『Forever』だったともいえる。

 

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MOVIE大戦含めて8作目、平成ジェネレーションズ単体としては2作目にあたる。

個人的には、モノサシ(※)である『MOVIE大戦MEGAMAX』よりも満足度が高く

『平成ジェネレーションズForever』にも負けず劣らずの出来であったと考えている。

※モノサシについては、以前書いた下記の記事をご参照ください。

「仮面ライダーx仮面ライダー フォーゼ&オーズ MOVIE大戦MEGAMAX」が突きつけてきた"冬映画の可能性" - 雑記屋さん

 

だがしかし、本作と『平成ジェネレーションズForever』とでは決定的に違うことがある。

今回はそこから触れていこうと思う。

『平成ジェネレーションズ FINAL』が『Forever』と決定的に異なる点。

それは、二次創作物のような出来である点だ。

 

作品としてはもちろん素晴らしい出来だし、劇場で鑑賞した際の衝撃たるや

頭をガーン!と殴られたかのようなものだった。

がしかし、冷静に考えると「ファンの期待に寄り過ぎてるのでは?」とも取れる

描写がいくつもあったのだ。

もっとも強く感じた部分はこれだ。

■オーズよ永遠に。FINALの中に見るForever

最新作の『平成ジェネレーションズForever』と掛けたのだがいかがだろう笑

本作のレジェンド枠で、世間を最もざわつかせたのは福士蒼汰さんの出演であったことは間違いない。

これは"奇跡"と言っても差し支えない出来事であっただろう。

 

しかし、レジェンドライダーとして、本作の中で一際丁寧に描かれたライダーがいた。オーズである。

これには火野映司を演じた渡部秀さんの『オーズ』に対する"愛"とも言える程の"想い"が影響している。

そもそも、渡部さんはTVシリーズ放送当時から大の仮面ライダー好きを公言しており、

そんな彼が演じた『オーズ』、思い入れが誰よりも1番強いことは当然とも言えることだろう。

ラジオやDVDのメイキング映像では、「オーズパートは監督の他アンクを演じる三浦涼介さんと3名で形作っていった」とあり、それ故に「やりすぎじゃない?」と感じるほどに愛が溢れていたのだと思う。

 

2011年公開の『MOVIE大戦MEGAMAX』においては下記のようなやり取りがあった。

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映司「ねぇ!一緒に戦うのって、もしかしてこれが最後?

アンク「そうなりたくなかったら、キッチリ生き残れ!」

映司「わかった!お前もな!」

アンク「・・・フンッ」

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このやり取りから6年、「一緒に戦う」のが「最後ではなかった」ことを証明したのである。

それだけでもファンからしたら涙することなのだが、『平成ジェネレーションズFINAL』で再会した際は

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アンク「映司・・・相変わらずボロボロだなぁ」

映司「(涙ぐみながら)お前のせいだろ・・・」

アンク「・・・知るか」

映司「今日この日だったんだな。お前がいる明日って。」

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と、TVシリーズ当時と変わらない、そこにはまさしく我々の知る映司とアンクがいたのである。

 

再会後は、かつての小気味よいやり取りを交えながら戦闘を行い、

無事フィナーレを迎えるのだがそのシーンがオーズにとってのFINALであり、しかしForeverでもあったのだ。

(アンクは今回も一時的な復活を遂げたに過ぎず、最終決戦後はまた消滅することになる。)

暗い倉庫に佇むアンク。それは実態なのか幻影なのかわからない、神秘的な描写であった。

そこにアンクの好物であるアイスキャンディーを持って現れる映司。

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「アーンク、はい!約束!」と渡されたアイスを頬張るアンク。

その後のアンクの演技は、言葉では表現しきれない、一種の芸術とさえ感じた。

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FINALでありながらも、『オーズ』という物語が永遠(Forever)に続いていくだろうことを示唆させる完璧な仕上がりであった。

しかし、この完璧過ぎる、愛が溢れた展開が故に、二次創作のような出来を

作品全体に広げてしまったとも言えるのだ。

 

果たして、オーズのTVシリーズを知らない子供世代がこのシーンを観て

我々と同じように感情移入できるかと考えると、おそらく否だろう。

ただ、僕ら大人世代としては大満足だったのではないか。もうそれで良い!うん、それで良い!!

 

と、感情がぐちゃぐちゃになっている中で方向を修正すると

本作が高評価を生んだ点は、上記のような過剰ともとれるファンサービスの他、

主に3つあると考えている。

 

■設定を忠実に守っている(冬映画特有の「超展開」が発生してない)

簡単なように見えて実は非常に難しい、しかしファンとしては大切にして欲しい事柄である。

なぜなら、以前の記事にも書いたが、「仮面ライダー」は作品ごとに異なる世界で生きている。

つまり、本来であれば異なる作品のライダーが交わることはないのである。

 

「交わることはない」こと自体は、同じく以前の記事で否定したものの、本作はちょっと特殊だ。

作品の中心となる『仮面ライダービルド』は日本が「スカイウォール」という壁により3つに分断されている。

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つまり、国という大きなものに独自の世界観を加えているのだ。「スカイウォール」はもちろん

他のライダー作品には登場しない。

ということは、ビルドを中心とした世界に他作品のライダーを出すことの難易度が高いのだ。

ではどうしたか?

簡単に言うと、平行世界である地球をぶつけることで、異なる世界線のライダーと共演させたのである。

敵の目的が、地球Aにいる自分と地球Bにいる自分を融合させて「完璧な1人になる」ことであり、

"それ"と地球同士が衝突することを防ぐことがライダーの目的。

それによって、スカイウォールのあるビルドの世界でも、

TVシリーズ中の設定を壊すことなく新旧ライダーの共演が叶っているのだ。

過去作、MOVIE大戦MEGAMAX以前は特に、「新旧ライダーは共演させるけど、それによって生じる矛盾には目をつぶってね!」と設定部分において詰めの甘い作品が多かった。

 

これらに加えて、如月弦太朗(福士蒼汰)についても設定を壊すことなく再登場を果たしている。

彼はなんと、2012年12月公開の『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』にて、変身アイテムである「フォーゼドライバー」を破壊してしまったのだ。

そこで、本作における如月弦太朗は『アルティメイタム』以前の如月弦太朗として登場しているのである。

(フォーゼシリーズとして観ると、既に続編が5年前に公開されているという、異色の作品となった)

 

このように、映画シリーズではとかく無視されがちな設定について、

説明の出来る方法で作品たちを繋げているのが本作なのだ。

 

■本作の監督が上堀内 佳寿也さんである

ではなぜ、本作はここまで設定を忠実に守った作品となりえたのか。

それは、監督が上堀内さんであったからだと言えるだろう。上堀内さんは、本作に登場するレジェンドライダー

全ての助監督を務めた後、エグゼイドにてTVシリーズの監督としてデビューしたという経歴の持ち主だ。

つまり誰よりも作品のことを深く理解している方が本作の監督をしたのである。

「そりゃこれほど(胸焼けするくらい)愛に溢れた作品になるわ」と妙に納得してしまう。

各キャストとそれぞれ1年間を共にしてきた上堀内さんだからこそ、キャストとの連携や画の魅せ方など演者と視聴者双方に細やかな配慮が叶ったのだろう。

 

■脚本が『エグゼイド』『ビルド』のメインライター2名による共作である

本作はTVシリーズにおける『エグゼイド』の脚本を努めた高橋悠也さんと、

『ビルド』の脚本を務めた武藤将吾さんとが協力して脚本を制作している。映画の主軸となる2作品の

メインライターが共同で脚本を仕上げたこともまた、本作が出来栄えをより良くしたことは明白だ。

厳密に言うと、高橋さんは『ビルド』パートと『レジェンドライダー』パートを担当されたのだが

各作品を入念に研究したというのであるから驚きである。

だからこそ、各レジェンドライダーに焦点を当てた展開もすんなりと受け入れられる、というよりも

"TVシリーズ当時のままの彼ら"を観ることが出来たのだろう。

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TVシリーズの設定を忠実に守れているのは、監督を上堀内さんが担当し、脚本を『ビルド』『エグゼイド』のメインライターに共作してもらったからという他ないのだ。

しかしそれもまた、完璧すぎるが故の違和感を生んでしまったと考えている。

 

さて、そろそろお腹もいっぱいになってきたと思うので

個人的に"これぞ王道!"という部分を1つ取り上げよう。 

 

■問われる"仮面ライダー"の存在意義

近しい内容は最新作『平成ジェネレーションズForever』でも触れられていたが、

あの作品は"仮面ライダー"と"視聴者"が存在について1つの答えを

導き出したような展開であった。

それに対し本作は、新旧ライダーが共演していく中で

仮面ライダーは何のために存在し何のために戦うのか」の解を見つけていく。

その「解を見つける」重要な役割を担うのが『ビルド』の

第2ライダーである万丈龍我(赤楚衛二)だ。

万丈はTVシリーズ11話から変身して戦うようになった、本作の中では

1番後輩にあたるライダーである。

※映画公開時がTVシリーズ14~15話あたりのはず。つまりまだ3週間くらいしか経っていない"未成熟"なライダーと言えるだろう。

 

万丈は行動を共にしていた仮面ライダーオーズ/火野映司(渡部秀)と

仮面ライダーエグゼイド/宝生永夢(飯島寛騎)に心情を吐露する。

「なんか、ピンと来ねえって言うかさ!世界がヤバくなってんのは肌感覚でわかんだけど、見ず知らずの他人のために、命を張れる理由がわかんなくて・・・」

ごもっともだ。普通に考えて無理だ。

さらに万丈は「誰に頼まれたわけでもないのに、誰に感謝されるわけでもないのに、なんで戦うんだよ」と戦いに向かうレジェンドライダーたちを見て呟く。

それは新人ライダーとして"信念"が出来上がっていない万丈のセリフであると共に、

(ファンであっても)視聴者が仮面ライダーに対して1度は思ったことがある内容ではないだろうか。

さて、僕はオーズパートを除けば本作は万丈のための作品と言っても過言ではないと思っている。

それほどに万丈視点で仮面ライダーとはなにか」を愚直に描いているのだ。

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「なんでだよ。頼まれたわけでもねえのに。誰に感謝されるわけでもねえのに!

なんでそんなボロボロになるまで戦えるんだよ!みんなバカばっかだ!

けど、悪くねえ。俺は俺のために戦う。俺が信じた、俺を信じてくれた者のために戦う!

-Are you ready?(ベルトからの変身音)- 変身!」

 

平成ライダー」が勧善懲悪のストーリーでないことは

ファンからしたら当然の事実であるだろう。

絶対的な正義が存在しない中で、それでも各々が信じる正義に向かって

歩みを進めていくのが平成ライダーの見所でもある。

 

本作は、個人的には戦闘シーンよりも

キャラクター同士の会話や心情の変化について注目してもらいたい。

(戦闘シーンも、もちろんカッコイイし、レジェンドライダーそれぞれの見せ場にはグッと来る演出が多数もりこまれている)

 

兎にも角にも、少しでも平成ライダーを観たことがある方は

本作を鑑賞することで「感じるなにか」があるはずだ。

ここのところ、まとめが雑で申し訳なくはあるのだが、

ただただ観てほしい。その気持ちがなによりも強い。

 

そして、今日もどこかで戦う仮面ライダーに思いを馳せてほしい。

そんな作品なのである。